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「集中力を高める方法」を科学的視点から解説!脳の仕組みから見る途切れない集中力の作り方について

集中力を失いスマホに気を取られている女性の様子

1. 現代人の多くが悩む「集中できない脳」の正体とは?

  • 大事な仕事があるのに、気づけばスマートフォンを触っている
  • 勉強を始めても、すぐに別のことが頭に浮かんでしまう

上記のような経験をした人も多いのではないでしょうか。

集中力が続かない理由は、意志の弱さではなく 脳の仕組み にあります。

脳科学の分野では、集中力のことを 「持続的注意(Sustained Attention)」 と呼びます。

自分とは関係の無い情報を無視して、必要な情報に絞りながら、長時間にわたって集中し続ける能力のことです。

例えば、警備員がモニターを数時間見続ける作業や、校正者が長い原稿の中から誤字を探す作業などは、持続的な集中力を必要とします。

しかし、どんなに集中していても、時間の経過とともに集中力は少しずつ下がっていきます。

「覚醒低下(vigilance decrement)」 と呼ばれる現象で、人間の脳にとって避けられないことだと分かっています。

つまり、集中が途切れるのは「気が散りやすい性格だから」ではなく、脳のエネルギーや仕組みによって起こる、よくある普通の現象なのです。

2. 脳が集中をコントロールする3つの仕組み

集中力をイメージしている女性の画像

集中力がどのように生まれ、途切れてしまうのかを理解するには、脳の働きを知ることが大切です。

脳科学の研究では、集中力を支える理論として、次の3つの仕組みが知られています。

覚醒モデル(Arousal Model)

集中力は、脳の覚醒レベルによって大きく変わります。

脳の「青斑核(locus coeruleus)」という部位では、ノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されており、覚醒状態を調整しています。

イメージしやすい例として、車のエンジンを考えてみましょう。

エンジンの回転数が低すぎると動きが鈍くなり、回転数が高すぎるとオーバーヒートします。

人間の脳も同じで、眠気が強すぎても、あるいは緊張しすぎても集中力は低下します。

人間が最も集中出来るのは、眠すぎず、興奮しすぎず、ちょうど良いバランスの状態にあるときです。

バランスの良い状態を保つことで、脳は集中力を長く維持できるようになります。

リソースコントロールモデル(Resource-control Model)

集中力は、脳の中で使える「集中のエネルギー」がどれくらい残っているかによっても変わります。

リソースコントロールモデルでは、集中力をスマートフォンのバッテリーのようなものと捉えます。

難しい作業をしたり、長時間同じ作業を続けたりすると、バッテリーが少しずつ消耗していきます。

さらに、集中力を下げる要因のひとつが 「心の彷徨い(mind wandering)」 です。

作業中に関係の無いことを考え始めると、脳は余計な思考にもエネルギーを使ってしまいます。

その結果、集中力のバッテリーが早く減ってしまい、集中力が途切れやすくなります。

機会費用モデル(Opportunity-cost Model)

脳は非常に合理的な働きをしており、常に「現在の作業を続ける価値があるかどうか」を計算しています。

タスクを続けるための努力(コスト)と、それによって得られる成果(ベネフィット)を無意識に比べています。

もしも脳が「作業に見合うだけの価値がない」と判断すれば、集中力は保たれなくなってしまうでしょう。

一方で、興味関心が大きい、達成すれば報酬がある、目的が明確であるなど、「やる意味がある」と感じる状況では、集中力を長く維持できます。

集中力が続くかどうかは、モチベーションの有無にも大きく左右されるのです。

3. 集中力を下げる4つの原因

脳の仕組みを踏まえると、集中力が低下する主な原因は、次の4つにまとめられます。

- 精神的疲労:集中のエネルギーが枯渇し、脳が休息を求めている

- 心の彷徨い:雑念や不安、過去の後悔や未来の心配によって、集中力が散漫になってしまう

- 不適切な覚醒レベル:睡眠不足や過度なストレスによって、最適な覚醒状態から外れてしまう

- モチベーションの低下:努力に見合う成果を感じられず、脳が「やめたほうが良い」と判断する

集中力の低下は、怠けや甘えではなく、脳が自分を守るために働いているシグナルといえます。

「どうして集中出来ないのか」と自分を責めるのではなく、脳の状態を理解して整えることが求められます。

4. 科学的に集中力を鍛える方法

集中力は生まれつきの才能ではなく、鍛え方を知れば伸ばすことができる能力です。

研究では、脳の働きに直接アプローチするトレーニング法と、日常生活で実践できる方法の両方が紹介されています。

トレーニング法(科学的アプローチ)

脳科学の研究論文では、持続的な集中力を高める方法として次の5つのトレーニングが紹介されています。

1. ビデオゲームトレーニング:反応速度や判断力を養い、気持ちの切り替えを鍛える。

2. ヨガ:呼吸や姿勢を整えることで、心身の覚醒レベルを安定させる。

3. マインドフルネス:今この瞬間に注目する練習で、雑念に流されにくくなる。

4. ニューロフィードバック:脳波をリアルタイムで観測しながら、自分の集中状態を調整する。

5. 経頭蓋直流電気刺激法(tDCS):弱い電気刺激を与えて、前頭前野の働きを促進する実験的手法。

上記の方法はいずれも、脳の状態を自分でコントロールする能力を育てることを目的としています。

日常でできる実践法

特別な装置がなくても、生活の中で集中力を維持する工夫はたくさんあります。

- 覚醒を整える:7時間以上の睡眠を確保し、作業中は1〜2時間ごとに短い休憩を取る。

- リソースを守る:作業中はスマートフォンを別の場所に置き、余計な刺激を減らす。

- 時間を区切る:25分集中+5分休憩を1セットとする「ポモドーロ・テクニック」を試す。

- モチベーションを高める:タスクを小さな目標に分け、こまめに達成感を得る。

- 報酬を設定する:作業後にご褒美を用意して、脳に「取り組む価値がある」と感じさせる。

集中を保つコツは、「気合い」ではなく、「環境」と「リズム」を整えることにあります。

5. まとめ|集中力は「意志」ではなく「技術」

集中力は、意志の強さで決まるものではなく、脳の仕組みを理解して整える技術です。

脳の状態を整えながら、目的をはっきりさせることで、集中力は誰でも高められます。

脳を責めるのではなく、脳と上手に付き合うこと。 それが、集中力を持続させるいちばんの近道です。